ついに完結を迎えた人気漫画「ゴールデンカムイ」。
隠されたアイヌの金塊を巡って北海道中の刺青の囚人を探すという「ゴールデンカムイ」のストーリーにおいて、重要となってくるのが本記事で紹介する網走監獄です。金塊を隠した張本人であるのっぺら坊が収監されていた網走監獄は作中で何度も描かれており、まさに「ゴールデンカムイ」の聖地といえるでしょう。
原作そっくりの光景の広がる網走監獄はゴールデンカムイファンなら興奮必至。
本記事では「コミックス何巻の何話に登場するのか」の解説を添えながら、網走監獄の聖地を紹介していきます!
網走監獄 正門
まず紹介するのは作中で何度も描かれてきた網走監獄の正門です。網走監獄を象徴する赤レンガ造りの門が、日本一厳重な監獄と言われただけの重厚感を醸し出しています。
網走監獄の正門は【14巻134話】で杉元が合流地点に指定した場所です。
第七師団の襲撃によって混乱におちいった網走監獄の中で、アシリパ、白石、キロランケ、インカラマッたちは杉元がのっぺら坊を連れて出てくるのを正門で待っていました。
杉元「アシリパさんを確保できたら正門で待て。アシリパさんを頼むぞッ白石!!」
正門の屋根の上は【14巻137話】でアシリパが「のっぺら坊は父親である」と確認するとても重要なシーンが描かれた場所でもあります。
原作の中で屋根に上がるためにインカラマッが「雪下ろし用のハシゴ」を見つけてきますが、筆者が訪れたのが桜の時期だったためかそのようなハシゴは見当たりませんでした。
網走監獄決戦の終盤では、正門を出た先でインカラマッが刺されて倒れていたり、監獄内からのっぺら坊と杉元を運び出した谷垣が鶴見中尉に捕まったりと作中では最も描かれた場所と言えるのではないでしょうか?
杉元「アシリパさん…あんたが父親だと確認したか?どんな顔してる?」
五翼放射状平屋舎房
続いて紹介するのは、網走監獄の目玉である「五翼放射状平屋舎房」です。実際に昭和59年まで使用されており、明治時代の獄舎の様子をそのまま留める木造建築の舎房としては国内最大規模。国の重要文化財にも指定されている貴重な建築です。
入ってすぐの場所には5つの舎房を一度に監視することのできる、六角形の中央見張り所があります。【13巻129話】でアシリパたちが舎房に侵入する際に、門倉が見張りを行っていた場所です。
700人以上の囚徒を収監できる建築物であり、放射状に広がる5つの舎房の中央には、全体を1箇所から見渡せるように六角形の「中央見張り所」がある
中央見張り所は自由に中に入ることもできます。
中央見張り所は【14巻132話】で第七師団が舎房に攻め入ってきた際に門倉が隠れていた場所です。第七師団の中に宇佐美がいることに気が付き門倉がギョッとするシーンが印象的です。
宇佐美「門倉部長殿ぉ!?お久しぶりでーす」
5つの舎房はそれぞれ歩いて見て回ることができます。ぱっと見同じに見える5つの舎房ですが、独居房と雑居房で造りが違ったり、第四舎にのみ脱走者の模型があったりして個性があるため、時間があればすべて見て回ることをオススメします。
それぞれの舎房には天窓があり、天窓から差し込む光が舎房内を明るく照らしています。
【13巻129話】では白石が外した天窓からアシリパ、杉元、白石たちが舎房内に侵入していきます。作中では木枠や鉄格子のデザインまで精密に描かれており、鉄格子をつたって杉元たちが降りて来るシーンにドキドキさせられたものです。
白石「網走監獄の場合…舎房のすべての窓には鉄格子がはめられているが、ただ唯一鉄格子のない窓がある。天窓さ。おそらく光を出来るだけ取り込みたいから鉄格子をつけてないんだろう」
5つある舎房の中で最も重要なのは第四舎です。偽のっぺら坊が収監されていたのが第四舎第六六房でした。アシリパ、杉元、白石が潜入したり、鶴見中尉がのっぺら坊確保のために攻め入ってきたのはこの第四舎になります。
【14巻132~133話】では入口から第四舎めがけて、鶴見中尉率いる第七師団が乗り込んできます。門倉が一斉開房装置を作動させたことで自由になった700人の凶悪犯たちと第七師団が乱闘するシーンも第四舎が舞台です。
鶴見中尉「どうしたこっちは遊び足りんぞ!有坂閣下の「坊や」に挨拶しろ!」
作中で偽のっぺら坊が収監されていた第四舎第六六房も実際に存在します。【13巻129話】でアシリパと杉元と白石が侵入した部屋です。右奥のトイレの壁も残されており、作中に描かれた通りの造りであるのが分かります。
門倉「次の新月の晩にのっぺら坊がいる房はここ…第四舎第六六房だ」
舎房内を見学した後は外に出て外観を確認してみましょう。【13巻129話】では舎房に侵入するにあたってアシリパが弓矢で反対側にロープを渡し、そのロープを伝って杉元たちが舎房の屋根に上がりました。毛布をかぶってノコギリで天窓の木枠を外して侵入したシーンが作中には描かれています。
白石「脱獄は手に入る道具が釘一本しか無い時もある。それに比べりゃノコギリでも何でも持ち込めるんからこんな楽なことはない」
それぞれの部屋の格子窓の下に番号が振られているのも【13巻129話】にでてくるイラストの通り。基礎部分に小さな穴が見えますが、これが【14巻133話】で杉元と白石がたどり着いた「通気口」です。
白石は両肩を外して独力で脱出、杉元は【14巻134話】で合流したキロランケの手投げ弾によって舎房から脱出することができました。
白石「通気口が思ったより狭かったが両肩を外せば出られるぞ」
網走監獄 庁舎
網走監獄の庁舎は明治時代に学校や官公庁の建築によく見られた「擬洋風建築」となっており、網走監獄では管理棟ととして使用されていました。典獄の部屋などもあったようです。
【13巻130話】では杉元たちの侵入がばれた後に、犬童が出てきたのがこの庁舎になります。【14巻136話】では正門の屋根に上ったインカラマッが見下ろす形で、庁舎の全景が描かれています。
犬童「ついにのっぺら坊を奪いに来たか。私が密かに作った「非常報知器」がうまく作動したようだな」
教誨堂
教誨堂とは受刑者の更生のために造られ、僧侶や牧師などの宗教者が教えを説きに訪れた場所であり、受刑者にとって唯一心の休まる場所だったようです。
【14巻134話】のタイトルでもあり、網走監獄決戦の中でも重要な場所となったのがこの教誨堂です。本物ののっぺら坊は犬童典獄によって教誨堂の地下室に隠されており、第七師団襲撃の混乱の中本物ののっぺら坊を動かすために犬童が姿を現します。
土方「犬童典獄は稽古で毎日出入りするので教誨堂があやしいと睨んでいたが、門倉が何度か調べてものっぺら坊の隠し部屋を見つけられなかった」
内部は床が板張りの擬洋風建築となっており、窓の格子、祭壇の仏様、シャンデリアなど細かいところまで作中で再現されています。
教誨堂の内部が描かれているのは、【14巻134~135話】で土方歳三と都丹庵士が犬童典獄を追ってくるシーンです。右の扉からは土方が、左の扉からは都丹が入っていき、この板張りの間で土方と犬童が刀で戦います。
土方「今日この瞬間まで私のような田舎育ちの農民が、貴様ら武士を凌ぐ忠義を貫いているという真実に耐えられんのだ」
また隠れた名シーンとして【9巻85話】を挙げたいのですが、教誨堂は白石がシスター宮沢にやっとあえた場所でもあります。白石は熊岸長庵が描いたシスター宮沢の絵に恋をし、シスター宮沢に会うために日本各地の監獄に収監、脱獄を繰り返しました。(後に白石が「脱獄王」と呼ばれるようになったきっかけとなります。)
白石「恋をしたから脱獄することにした」
高見張り
尾形ファンの皆様お待たせしました。続いて紹介する高見張りは、囚人の脱走など不測の事態に備えて看守が見張りをしていた監視所です。高さは8mほどで中には看守の人形が設置されているため、遠目に見ると本当に人がいるように見えます。
高見張りは【14巻137~138話】網走監獄決戦の終盤に、尾形が杉元とのっぺら坊を狙撃した場所です。
ほぼ作中に出てきた通りのデザインですが作中では正面にハシゴが掛けられおり、尾形は正面の窓の手前に座り込む形で狙撃をしていました。杉元にとどめを刺そうとしたところ、火災が延焼したことで煙が充満し谷垣の助けもあって杉元は一命を取り留めました。
尾形「近づいて確認したが、ふたりとも死んでいた」
高見張りを最も近くで見学できるのは写真の赤丸の場所になります。知らないと見逃してしまう場所にあるため尾形ファンは事前にチェックしてから行きましょう。上図の高見張りは「博物館 網走監獄」の敷地外にあり、チケットを購入した場所から左手に進み関係車両の駐車場の隅に設置されています。
職員官舎
職員官舎は網走監獄に侵入するためのトンネルの出口となった門倉の宿舎のモデルです。【13巻126話】でトンネルの開通とともに初登場します。【13巻128~129話】では侵入の計画を立てるときに使われ、宿舎内の囲炉裏を囲んで門倉、杉元、土方たちが会話をしていました。
こちらの職員官舎は内部に入ることもでき、作中に出てきた囲炉裏なども見ることができます。
土方「失敗すればここのトンネルはすぐに見つかり、その瞬間に門倉はお尋ね者だな」
懲罰房
懲罰房は獄内規則を破った囚人が収監される独立型独居房です。現在網走監獄内ある懲罰房は、樺戸集治監で使われていたものを移設してきたものになります。入口を閉めると房内は真っ暗になることから通称「闇堂」と呼ばれ、受刑者には7昼夜重湯のみが与えられてたようです。
こちらの懲罰房は【9巻83話】に出てくる樺戸集治監で白石が収監されていた懲罰房のモデルとなっています。
看守「今日から雑居房に移動だ。良かったな、白石由竹」
鏡橋/網走川
網走監獄では外堀に沿う形で網走川が流れており、受刑者は収監時/出所時ともにこの鏡橋を渡ることになります。「川面に写った自分を見つめ直し、心の垢を落とす目的で岸に渡るように」といつの間にか鏡橋と呼ばれるようになりました。現在の鏡橋は二代目鏡橋を再現したもののため、作中に出てくる当時の鏡橋とは少し雰囲気が異なります。
作中では第七師団がのっぺら坊を奪いに来ることを想定して爆弾が仕掛けられており、【13巻130話】の中で実際に爆破されました。
犬童「対岸をつなぐ唯一の橋だ!これでしばらくは時間が稼げる。第七師団を迎え撃つ態勢を整えろッ」
現役の鏡橋は「網走刑務所」前で見ることができます。網走刑務所は現役の刑務所であり、当時の網走監獄もこの場所にありましたが「博物館 網走監獄」として展示される際に今の場所に移設されました。「ゴールデンカムイ」作中の網走監獄は、現在の「網走刑務所」の場所にある前提で描かれています。現在の「網走刑務所」にも赤レンガ造りの外堀は健在で、当時の面影を見ることができます。
網走川と外堀の光景は作中でも何度か描かれており、【13巻125話】で土方歳三、谷垣、キロランケが船に乗って監獄を視察するシーンや、【13巻126話】でクチャ(仮小屋)を作って侵入のためのトンネルを掘るシーンで登場します。
また【13巻130話】では「雷」型駆逐艦に乗って鶴見中尉率いる第七師団が攻めてくる際に、この網走川をオホーツク海から網走湖に向かって遡上してきます。
この駆逐艦は吃水(船体が沈む深さ)が1.5mしかなく網走川を容易に航行可能である
その他のファン必見スポット
ここからは網走監獄を観光で訪れた際に発見したホームページに載っていない「ゴールデンカムイ」ファン必見スポットを紹介していきます。
白石由竹のモデル
網走監獄を語るうえで避けては通れない人物がいます。それは「昭和の脱獄魔」と恐れられた白鳥由栄です。白鳥由栄は紛れもなく実在した人物であり、名前から想像できる通り白石由竹のモデルとなっています。
白鳥由栄は網走監獄を含めて4か所の刑務所を脱獄した脱獄王であり、網走監獄では第四舎二四房の視察孔をくぐり抜けて脱獄しました。第四舎二四房の脇には白鳥由栄を特集したパネルが展示されているので、白石を想像しながら読んでみてください。
実際に白鳥由栄がくぐり抜けた視察孔は、五翼放射状平屋舎房の展示スペースに設置されています。視察孔には鉄格子がはめられていましたが、鉄格子を固定していたネジに毎日味噌汁をかけ、その塩分でネジを腐食させて外したそうです。
全国の監獄に収監されては脱獄を繰り返しているうち、俺はいつしかこう呼ばれるようになった。「脱獄王」と。
猟銃/サーベル/刀
網走監獄の看守には猟銃とサーベルの携帯が義務づけられていました。実際は囚人の逃走防止というだけでなく、山や畑での作業時の熊除けの意味が大きかったようです。そんな猟銃とサーベルの実物は五翼放射状平屋舎房内の展示スペースで見ることができます。
サーベルや刀は典獄や看守長などの身分によって品質や長さが異なっていたようです。作中では【12巻117話】で宇佐美が養豚場に置いていった刀や、【14巻135話】で犬童が土方と戦う時に使用した刀と似ているのが分かります。
網走監獄の看守は作中では猟銃ではなくモシン・ナガンというロシア製の小銃を携帯していましたが、現実の網走監獄にはのっぺら坊はいませんので、原作ほどの重装備ではなかったようですね。
宇佐美「ロシア製のモシン・ナガン。奥にマキシム機関銃も見えたぞ。こんな重装備の看守は網走監獄だけだ」
独居房の視察孔
舎房やその扉、視察孔には独居房、雑居房などに応じて様々な形が存在しますが、ここで紹介するのは第四舎の独居房の視察孔です。
【12巻117話】で網走監獄に新人看守として潜入した宇佐美がのっぺらぼうを覗くシーンに出てくる視察孔がまさにこのデザインです。網走監獄の中にも実際に覗ける視察孔がいくつかありますので、宇佐美の気持ちで視察孔を覗いてみましょう。
門倉「ここに来て一番に学ぶことは「のっぺら坊に関わるな」だ」
明治45年の網走監獄平面図
五翼放射状平屋舎房内の展示スペースには明治45年当時の網走監獄の平面図が展示されています。「ゴールデンカムイ」の金塊争奪戦の舞台は明治40年~、原作ではこちらの平面図を参考にしたようで、そっくりな絵が【13巻126話】や【13巻128話】など舎房への侵入計画を立てる際にでてきます。
白石「網走監獄は周囲三方が山に囲まれている。山側は囚人舎房があるので特に厳重なんだ。とすればやはり侵入経路は警備の手薄な網走川に面した塀しかねえ」
都丹庵士のモデル
【12巻119話】で登場する都丹庵士率いる盲目の盗賊たちにもちゃんとモデルがあります。硫黄山での採掘作業に網走監獄の囚人を駆り出していたという事実は確かにあったようで、作中に出てくる通り1/3もの囚人が不幸な目にあっていたようです。庁舎内にある展示スペースに硫黄山での苦役の様子が説明されたパネルがあるので探してみましょう。
白石「そいつらは硫黄山で苦役させられた囚人だろう。硫黄採掘にかり出された囚人たちは失明する者が続出、明治29年に囚人の採掘が中止されるまでたった半年間で42人もガスで死んだそうだ」
ゴールデンカムイ土産とサイン色紙
最後に「ゴールデンカムイ」ファンにおすすめしたいお土産スポットを紹介します。
網走監獄でのお土産は庁舎の中で購入することができます。「ゴールデンカムイ」の舞台にもなかったことで、コラボ商品ももちろん置かれています。筆者が訪れた2022年春にはクッキーや食べられるオソマ(ネギ味噌でした)、アシリパさんのアザラシカレーといったラインナップが揃っていました。
お土産品の中で特にオススメしたいのが「ゴールデンカムイ」作中に登場するキャラクターの衣装をあしらった巾着バターあめときびだんごです。写真は右から順番にアシリパ、杉元、第七師団、のっぺら坊、門倉部長、鯉登少尉、鶴見中尉になっています。
お土産コーナーの近くには、作者の野田サトル先生のサイン色紙が飾られています。網走監獄なのでやっぱり描かれているキャラクターは白石由竹です。背後に押されたいくつもの白石スタンプが良い味を出していますね。こちらは野田サトル先生が取材のために2017年2月に網走監獄を訪れた際に書いたサインのようでした。
最後に
いかがだったでしょうか。
網走監獄は「ゴールデンカムイ」ファンであれば一度は訪れたい聖地といえるでしょう。作中で見覚えのある光景が広がる網走監獄はファンであれば興奮必至です。一度は訪れ網走監獄決戦の様子を想像しながら観光してみてはいかがでしょうか。