源氏の兄弟刀「鬼切丸(髭切)」と「薄緑(膝丸)」をご存じでしょうか?
源氏一門に代々受け継がれてきたこの二振りの刀剣は、兄弟刀として親しまれ刀剣ファンの間でも根強い人気を誇っています。
その名前を見て、鬼切丸(髭切)と薄緑(膝丸)の名前の意味って?なぜ兄弟刀とされているの?など疑問に思う方も多いでしょう。
本記事では鬼切丸(髭切)と薄緑(膝丸)の謎を紐解き、
・鬼切丸(髭切)と薄緑(膝丸)の名前の由来と意味とは?
・なぜ兄弟刀とされているのか?
・実物を見るためには?
の3点について解説をしていきます!
鬼切丸(髭切)と薄緑(膝丸)の名の由来
鬼切丸(髭切)と薄緑(膝丸)という名前を聞いて、まず気になるのがその名の由来です。
鬼切丸は別名を髭切といい、薄緑は別名を膝丸というなど、同じ刀でも様々な名を持つことでも知られています。
<鬼切丸(髭切)の意味と由来>
髭切という名は、罪人を切った際にその髭まですっぱりと切れたことが由来。
そしてその後鬼切丸と名前を変えることになりますが、その由来は渡辺綱という武将が鬼に連れ去られかけた際、鬼の腕を切り落として九死に一生を得たという一説からのようです。
<薄緑(膝丸)の意味と由来>
膝丸という名は、罪人を切った際に膝まで切れたことが由来。
その後、土蜘蛛退治で活躍したことから蜘蛛切、ある夜に蛇の泣くような声で吠えたことから吠丸、そして源義経が吉野山になぞらえて薄緑と命名し、この薄緑が代表的な名として広まっていったそうです。
なぜ兄弟刀とされているのか?
鬼切丸(髭切)と薄緑(膝丸)は、源満仲という人物が平安時代に作らせた二振りの宝刀です。
源満仲は清和天皇の孫であり、ある時天皇から国を守るようにと命を受けました。その役割に相応しい刀を持たなくてはと思い作らせたのが鬼切丸(髭切)と薄緑(膝丸)でした。
実際に打ったのは安綱という刀工。同じ時代に同じ人物によって作られその見た目もそっくりであるということから、鬼切丸(髭切)と薄緑(膝丸)は兄弟刀として親しまれるようになりました。
日本刀を擬人化したゲーム『刀剣乱舞』にも、髭切と膝丸という名で兄弟として登場し人気を博しているようです。
実物を見るなら京都へ!
そんな鬼切丸(髭切)と薄緑(膝丸)ですが、実物は京都にある寺社に保管されています。
現在鬼切丸(髭切)は北野天満宮に、薄緑(膝丸)は大覚寺に所蔵されています。普段は一般公開されていないのですが、毎年春や秋に開催されている特別公開のタイミングで見ることができます。
筆者は2021年4月に北野天満宮と大覚寺の両社合同で開催されていた特別展『両社寺の歴史と兄弟刀』にて、兄弟刀の実物を拝観してきました。
特別展『両社寺の歴史と兄弟刀』で実物を拝観
『両社寺の歴史と兄弟刀』 とは2021年春に京都で開催された特別展です。
普段は見ることのできない兄弟刀ですが、北野天満宮と大覚寺が同時期に共同で兄弟刀を展示するという内容となっており、この貴重な機会に実物を拝みに行ってきました。
※特別展『両社寺の歴史と兄弟刀』は現在は終了していますが、鬼切丸と薄緑が見られる特別展は京都で定期的に開催されているようです。
各寺社では鬼切丸と薄緑それぞれの限定御朱印も頒布されておりましたので、そのデザインについても紹介していきます!
北野天満宮:鬼切丸(髭切)
まず紹介するのは、鬼切丸を所蔵している北野天満宮。
北野天満宮は全国の天満宮の総本社です。御祭神は菅原道真公なので学問の神様というイメージが強いですが、他にも様々な御利益があるそうです。
特別展『両社寺の歴史と兄弟刀』が開催されているのは北野天満宮の宝物殿でした。
展示のメインはもちろん鬼切丸(髭切)ですが、他にも北野天満宮の歴史を物語る宝物の数々や刀剣、甲冑、書物などが展示されています。
こちらの刀剣が、兄弟刀のうちの一振り「鬼切丸(髭切)」の実物です。
反りが美しく、細身で端正なフォルムが印象的です。鬼を斬ったという伝説に納得してしまうような、見た目にもよく切れそうな太刀です。
鬼切丸は鬼の腕を切ったという伝説や平安時代に人喰いの鬼がいたのだというその背景から、最近人気の作品『鬼滅の刃』と重ねて語られることが増えています。鬼滅の刃の作品中で主人公が扱う日輪刀という刀に似ているという考察もあり、今後より一層人気の出てくる刀剣と言えるでしょう。
宝物殿では作られた時代ごとに数々の刀剣が展示されていました。そんな刀剣達と比べても鬼切丸は何か雰囲気が違うというか、他の刀剣に無い空気をまとっているような印象を受けました。
参拝の記念に鬼切丸の限定御朱印をいただきました。「鬼切丸」と「髭切」の名前が刻まれたかっこいいデザインの御朱印です。
特別拝観ではこのような限定の記念品も手に入れることができるので、刀剣ファンの方はぜひ実物を見に現地を訪れることをおすすめします。
大覚寺:薄緑(膝丸)
続いて紹介するのは、薄緑を所蔵している大覚寺というお寺です。
大覚寺は、平安初期に嵯峨天皇の離宮として建立されたのが始まりです。
境内はお堂エリアと大沢池エリアに分かれています。大覚寺の東側には1周約1kmの大沢池という池が面しており、参拝のついでに散策できるようです。
大覚寺でいただいた御朱印はこちら。薄緑色の台紙に「薄緑」と「膝丸」の名が書かれたデザインです。
特別展は大覚寺境内の霊宝館にて開催されていましたが、写真撮影は全面NGでした。
薄緑は霊宝館のちょうど中央あたりに展示されていました。薄緑も鬼切丸と同様に源氏一族に代々伝わる宝刀であり、その持ち主は源頼光、源頼基、源頼義、源義家、そして源義経など誰でも一度は聞いたことのある名前が続きます。
薄緑も鬼切丸と同様に端正で洗練されたフォルムです。個人的な感覚の話になってしまいますが、鬼切丸に可憐さを感じた一方薄緑には勇猛さを感じました。
似ていてるけれど印象の異なるこの二振り。実物を見てみて、それぞれどんな性格の刀なのか想像を広げてみるのも楽しいかもしれません。
境内の最も東に位置する五大堂からは大沢池を望むことができます。
五大堂には「刀剣乱舞」に出てくる薄緑(膝丸)のグッズが展示されていたので、刀剣乱舞ファンの方はぜひ立ち寄ってみることをオススメします!
最後に
いかがだったでしょうか?
源氏の兄弟刀 鬼切丸と薄緑は、同じ時代に同じ人物によって作られてからその名を次々と変えていきました。それぞれの名は恐ろしくも興味深い伝説に基づいており、その意味や由来について理解することができたかと思います。
兄弟刀 鬼切丸と薄緑に興味を持っていただけた方は、ぜひ実物を見に京都を訪れることをオススメします。
兄弟刀を見ることができる特別展は、例年定期的に開催されています。
開催期間や開催場所は上記のような内容で検索をすることで、確認することができます。